ふつうの鉄道と観光鉄道の違い

ふつうの鉄道と観光鉄道の違いは何ですか?

これ、意外と知ってそうで知らない人が多い。

答えは、ふつうの鉄道というのは「目的地へ行くために乗る」もの。
これに対して観光鉄道というのは「乗ることそのものが目的」のもの。

観光鉄道というのは、乗ってみたくなるような路線だったり、乗ってみたくなるような列車を走らせれば、その地域には用がなくても人は来るということです。

わざわざ行って、乗ってみたくなるような列車を走らせれば、特別な景色がない、何の変哲もないような路線でも観光路線になるのです。

皆さん、私のことをマニアだと思っている。
「社長はマニアだからできるんですよ。」と言われます。

まあ、鉄道は好きですし、子供のころから興味は持っていて、それを継続していますから、マニアと言われれば否定はしませんが、ではマニアとマニアじゃない人との違いは何かというと、「愛好者の気持ちがわかるかどうか」だと思います。

つまり、わざわざ乗りたくなるような列車とはどういう列車なのかということ。
そして、そういう列車は、別に巨額の投資をしなくても、今あるものを工夫するだけでできるということを私は考えて実践しているのです。

都会の人たちが、何の用事もない地域に、わざわざ行ってみたくなるようなきっかけをつくる。これが観光です。
それが鉄道で実践できれば、地域に人は来るわけですから、そうすれば地域に経済が生まれるでしょう。

人間はどこかへ行きたいという習性がありますから、今度の休みにはどこでもいいから行きたい。
だったら、うちへおいでよ。
人間はお金を使いたいという習性がありますから、どこかで買い物をしたい。
だったらうちで使ってください。

そういう場所を用意するだけで、皆さんいらしていただいて、お金を使ってくれる。
それが観光列車の一つの使命だと私は思っています。

そして、田舎というところはリソースが少ない。
リソースというのは特に人的資源。

だから、観光バス10台で行きますから、500円のお弁当を400個作っていただけますか、と言われても応えることができません。
できたとしても疲弊して終わってしまいます。
でも、1万円のお弁当を30個作ってくださいと言われたら、それならできるでしょう。

つまり、客単価を上げなければ田舎のリソースでは成り立たないのです。
だから、500円のお弁当を400個作るのはお断りして、1万円のお弁当を30個作るお仕事をお引き受けする。
そうすればかなり上等なお弁当ができますから、いらしていただいたお客様にも必ずご満足いただけますし、結果的に地域にもお金が回ります。
今ある設備、今ある人員でお料理ができますから、リソース的に無理がありません。

これが伊勢海老列車であり、雪月花なのです。

つまり、申し訳ございませんが、お客様を選ばせていただいているのでありまして、500円のお弁当が食べたいなら他へ行ってください、ということなのです。

でも、それだけがマーケットではありません。
もっと安く旅をしたいという人もいるでしょうし、中には「お前のところは金持ちしか相手にしないのか」と立腹される人もいるかもしれません。

そういう人たちをお客様にするためにはどうするか。
余計なサービスはしないことです。
つまらないサービスをすると逆に陳腐化します。
だったら何もサービスはしない。
つまり、走っている列車に勝手に乗っていただく。
予約も必要ありません。
どうぞ乗ってください。

ただし、その何もサービスしない列車であっても、「わざわざ用事もないのに乗りに来たくなるような列車」でなければなりません。

これが国鉄形観光急行なのです。

もちろん何もサービスはしないとは言っても、各所にいろいろな仕掛けはしますよ。
話題になるような仕掛けや、写真を撮りたくなるような仕掛け、今だけ、ここだけ、あなただけの仕掛けを随所にちりばめることで、またいらしていただける仕組みを作っているのです。

これが商売というものですから。
だから、マニアであることは最低条件として必要かもしれませんが、あとは商売をどうやって盛り上げるかという工夫が勝負所であって、これはどんな商売も同じなんです。

前にも書きましたが、ラーメンに命を懸けている職人技の店主のいるお店と、仕事だからラーメン屋をやっているだけという店主のお店と、値段が同じで味もほとんど同じなら、あなたはどちらへ行きますか。
私だったら、値段も味も同じなら、ラーメンに命を懸けている店主のお店に行きます。
なぜなら、その一生懸命さを味わいに行きたいからです。

でも、ラーメンに命を懸けている店主のお店と、仕事だからラーメン屋をやっているだけという店主のお店とでは、味が同じなんてことはあり得ません。
スタート時点は同じかもしれませんが、どんどん差が開いていくでしょう。
そうなると、値段の勝負ではなくなって、味の勝負になる。
つまり、安いから売れるというものではなくなって、高くたって良いものならば買う人たちがお客様になってくれるのです。

ラーメン屋さんを例に出しましたが、1杯1000円のラーメン屋に行列ができていたり、反対に1杯500円のラーメン屋がガラガラだったり。

観光列車だって同じで、お客様を選ぶということはそういうことなのです。

えちごトキめき鉄道は、お客様の懐具合に合わせて、2万5千円のお昼ご飯をお召し上がりいただく列車と、500円の急行料金を追加するだけで乗れる列車を走らせていて、それぞれにお客様に選んでいただきながら、お客様を選ばせていただいているのです。

そして、どちらの列車のお客様にも、必ずやご満足いただける商品としての観光列車を提供しているのであります。

なぜならば、地域の看板を背負っているからで、かつ、リソースが限られているからです。

ちなみに雪月花と観光急行、どちらが儲かっていると思いますか?

実は観光急行なんです。

売上的には雪月花の方が何倍も大きいですよ。
でもね、その分経費が掛かっている。
つまり原価率が高いのです。
なぜか?
いい食材を使っているからです。

これ、私のポリシー。

前職時代には商売のわからない公務員連中に「原価率が高すぎる! もっと低くしろ!」と言われましたが、その時私はこう答えました。

「あなたがお客様になるとしたら、原価率の高いレストランと原価率の低いレストラン、どちらへ行きますか?」って。

案の定、商売のわからない連中は机上の数字ばかり追いかけたものだから、私が居なくなったらすぐに原価率の高いレストランを閉店してしまいましたが、新潟県までわざわざいらしていただけるのですから、「なんだ、大したことないな。」と思われたら新潟県の印象が悪くなりますからね。
新潟県の看板を背負っている以上は、新潟県の名に恥じない、日本一の観光列車にしなければならないのです。

さて、賢明なる読者の皆様方はお気づきになられたでしょうか。
社会のパラドックスを。

つまり、雪月花は利益率が低く、観光急行は利益率が高い。
これはどういうことかというとですね、あまりお金を持っていない人たちから利益をいただいて、お金持ちからは利益をいただいていないという構造があるのです。

そんな商売をやっているとはけしからん!

そう御立腹される方もいらっしゃるかもしれませんが、世の中というのはそういうものでありまして、百貨店だって高級品の売り場ではなくて、食料品や日用品の売り場から利益を上げていかないと、全体の利益が確保できないのです。

なぜなら分母となるお客様の数が圧倒的に違うからです。
高級品の売り場は空いていて、食料品の売り場は混んでいるでしょう。
だから、そういうところから利益が上がるのです。
でも、では高級品の売り場は不要かというと、実はそうでもない。
なぜなら、高級品の売り場がなくなったら百貨店じゃなくて単なるスーパーマーケットになりますからね。
ブランドじゃなくなるのです。

もう15年前の話になりますが、私の居た航空会社の飛行機にはファーストクラスが付いていました。
今でも付いていると思いますが、世の中はファーストクラスを廃止にしていく時代でした。
でも、お客様としてはファーストクラスの付いている飛行機と、エコノミークラスだけの飛行機のどちらを選ぶでしょうか?
自分はエコノミークラスに乗る選択肢しかないとしても、オールエコノミーの会社の飛行機よりも、やっぱりファーストクラスが付いている飛行機のエコノミークラスに乗りたいでしょう。
これがブランドであり顧客心理です。

だから、豪華観光列車が走ることで、観光路線としてのブランドが上がるのです。

さぁ、今度の週末、ジンと肉列車、夜行列車が走ります。
雪月花という豪華列車をやっている会社のお料理列車ですからね。
クオリティー高いですよ。
夜行列車の夜鳴き蕎麦も、今回はサプライズがあるかもしれません。

ご予約されていない方は、今すぐ、ご予約ください。

あと数席空席があります。

今ならまだ間に合います。

皆様方のご乗車をお待ちいたしております。

前置きが長かったけど、なんだ、番宣か・・・
まぁ、そうおっしゃらずに。

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